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京都地方裁判所 昭和60年(わ)715号 判決

本籍

京都市右京区西京極芝ノ下町三七番地

住居

同市西京区桂上豆田町五〇番地の三

不動産仲介業

辻井哲男

昭和八年二月二二日生

右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は検察官山田一清出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一〇〇〇万円に処す。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実は)

被告人は、昭和五七年ころには全日本同和会京都府・市連合会事務局長長谷部純夫らが架空の債務を計上した納税申告をなすなどの方法により脱税行為を行なっていることを認識していたものであるが、納税者を長谷部らに紹介して紹介料名下で金員を得ようと考え、同人及びこれより先に右連合会が組織活動の一環として前記方法で脱税を行うことをお互いに了解していた右連合会会長鈴木元動丸、同会事務局次長渡守秀治らとも長谷部を介して意思を相通じ、ここに長谷部、鈴木、渡守、更には別紙別表記載の共犯者と共謀の上、相続税を免れようと企だて、同表記載のとおり三回にわたり、いずれも被相続人が有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸、同表では同和産業と略記する)から債務を負担しており相続人がそれを承継したと仮装するなとした上、被告人及び長谷部において京都市右京区西院上花田町一〇番地の一所在の所轄右京税務署に赴き、同署長に対し虚偽の相続税の申告書を提出し、もって不正の行為により相続税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  大蔵事務官作成の報告書(検第四八号)

別紙表番号1の事実につき

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検第五八ないし六〇号)

一  小野義雄(検第五〇号)、中村艶子(検第五一、五二号)、中村利秋(検第五三ないし五五号)、長谷部純夫(検第五六号)、鈴木元動丸(検第五七号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の各脱税額計算書謄本(検第四四、四五号)及び証明書謄本(検第四六号)

同表2の事実につき

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検第四〇ないし四二号)

一  高橋義治(検第二八ないし三〇号)、高橋とみよ(検第三一、三二号)、池田文夫(検第三三号)、小野義雄(検第三五号ないし三七号)、長谷部純夫(検第六六号)、鈴木元動丸(検第六七号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書謄本(検第二四号)及び証明書謄本(検第二五号)

同表3の事実につき

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検第一八、二〇、二一号)

一  坂口透(検第五号)、林キク(検第六号)、小嶋峻平(検第七号)、篠原孝壽(検第八号、謄本)、林昌男(検第九号、謄本)、林康司(検第一〇ないし一四号、いずれも謄本)、長谷部純夫(検第六四号、謄本)、鈴木元動丸(検第六五号、謄本)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の各脱税額計算書謄本(検第一、二号)及び証明書謄本(検第三号)

(法令の適用)

罰条 いずれも刑法六五条一項、六〇条、相続税法六八条一項(別紙別表番号1、3については包括一罪、なお同表番号3については同法七一条一項も適用)

刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑

併合罪の処理 懲役刑については刑法四七条、一〇条(犯情の最も重い別紙別表番号3の罪の刑に法定の加重)、罰金刑については同法四八条二項

宣告刑 懲役一年及び罰金一〇〇〇万円

労役場留置 同法一八条

懲役刑の執行猶予 同法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、被告人が紹介料名下で金員を得ようとして全日本同和会京都府・市連合会に三回にわたり納税者を紹介し、合計一億七〇〇〇万円余りもの多額の税金を免れさせたという事案であり、被告人が本件で利得した金員は二四〇〇万円余りにものほること、被告人は本件と同種行為を反復していたことにも照らせば犯情悪質といわざるを得ず、懲役刑についての実刑処断も考えられるところであるが、被告人は今では本件行為を十分反省し、納税者との間で示談に努め本件納税者に合計一四〇〇万円の支払いを約していることを勘案すれば、懲役刑の執行を猶予して主文掲記の罰金を科するのが相当と判断した。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 氷室眞)

別表

〈省略〉

(注) 番号3の林昌男については、同人の弟である林康司が代理として相続税を申告

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